【第10章】雨の公園

夜の10時くらいだろうか、吐く息が白く、小雨が降っていた。
まるで、ゾンビのように雨に打たれながら最後の場所を探した。

「もういい・・本当に、死のう・・。」

道路工事にあった黄色と黒のロープを持ち、いつもの公園に行った。
その時の公園は、とても広く感じ、土の上に落ちる静かな雨音を、今でもハッキリと記憶している。

公園の奥には、林があるのだ。あそこで、死のう・・。

僕は、林へゆっくり歩き、首を吊れる枝を探した。
しかし、いざ探すと適度な位置にある枝がない。周辺の木を見渡してはみたが、体が凍えすぎて、次第に思考回路が弱まって来た。

「もう、どうでもいいや、はやく楽になりたい。」

そう思い、高い位置の枝にロープを飛ばして、輪っかになるよう結び、強く引っ張って確認した。

「もう寒くて限界・・。早く死にたい。」

僕は、ロープに手をかけた。

この時に、愛する家族や仲間の事が、過ぎったのだが、生きていて申し訳ないと言う想いの強さが打ち勝った。

「さようなら」

両手でロープを持ち、首が締まるよう差し出し、ダイブした。


・・・・・・・・・・・。


それから、どれだけの時間が経過したのか、まったくわからないのだが
気がつくと視界は、天を向き、顔で雨を受けていた。首元からは血が出ていて、大の字で倒れていた。

しばらく状況がつかめなかった。

とにかく、寒い。
とにかく、痛い。
とにかく、辛い。

こんな状況が悔しくて、子供のように大きな声で泣いた。
泣いて泣いて泣きわめいて、濡れた砂利の上を這いつくばってのたうち回ってまた泣いた。

もうどうしていいのか、わからず、僕は地面の砂を口の中に入れ、歯が折れるほど噛み砕いた。

ガリガリと音を立て血が出るほど噛んで噛んで噛み砕いた。

そしてそれを飲み込もうとした時に、当然ながら吐き気が起き、砂を嘔吐した。

この時なんとなくだが、気が少し落ち着いてきた。

しかし、手も足も感覚がない。

このまま目を閉じて死にたいのだが、寒さから逃げ出したい自分が、なんとか立ち上がろうと意識を誘う。

しかし、ガタガタと震え、身体が麻痺してうまく立ってない・・・。

その時だ、前方の街灯が目に入った。そして、それと同時に公園全体がとてつもなく輝き出したのである。


僕は、びっくりする感情も残されていなかった、ただ呆然とその風景を見たのである。
そして、それは幻覚であろう事も自分で理解しながら。

僕から5m先に、光の棒状の柱が見えた、その光の柱は、人型に姿を変え、神々しい物体として目の前に立った。

その神のような光は、僕に手を広げてこう言ったのだ。

「死を選択するのならば、再度、芸能を目指す選択もあるのでは?」と

そう、僕は小学校の頃から、ギターをしており、ずっと音楽、芸能で花を咲かせるのが夢だった。25歳までずっと音楽をやり続けていたのだが、会社の代表となり、いつのまにか諦めていた。

死ぬ勇気があるのなら、この歳からでも音楽で成功する事は可能性がゼロでないとそう諭されたのだ。

そう言うと、その神様らしきものは、消え、地面には、六角形の光が多数とそれを漂うオーブのような物が、無数に飛んでいた。次第にそれは消え行き、徐々に通常の雨の公園に戻っていった。

妄想か、錯覚かは、わからないが、確かに、人生、何も成し遂げていない。もう一度、憧れた世界。音楽や芸能を目指す人生が、あってもいいかなと鼻で笑ってみた。。

僕は、なんとか這いつくばって、公衆トイレまで行き、雨のあたらないところで横になった。
幸い、そこにダンボールがあり、その上で身を休めた。

しばらくして、なんとか立ち上がり、水道で泥と血だらけだった自分の首回りや手首などを洗い流した。

そして、僕は、その時に改めて気がついた。

あの神は、まやかしかもしれないが、これだけは間違いない。

僕は、マイナスからじゃない、ゼロからなんだ。

欠けた奥歯を、舌で触りながら、公園で雨が止むのを待った。


11章に続く・・・。

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意を決した公園

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