【第18章】旅立ち

僕は、事務所を探しに東京に飛んだ。半分観光もあったのだが、地方とはまた違う活気を感じる。

僕の経営していた倒産会社も東京支社があったので月に1度来ていたのだが、前とは違う根拠のない自信に満ちあるれていた。

事務所は、以前同様、信用がないため不動産は、ほぼ全滅。そこで、シェアオフィスを中心に探し、良い物件を見つけ、即契約した。

その夜、お台場の海岸でレインボーブリッジを見ながら、この東京で絶対に成功する!と夜景に向かって強く誓った。そして、それと同時に、ここまで来れた数々の出来事や人々に感謝して涙が止まらなくなったのだった。この頃は、自分でもおかしいと思うくらい涙腺が緩かった。

そんな想い出の場所であるため、今でもよく、初心に帰るためにあの場所に行く。

さて、事務所も決まった事なので、旅立ちの準備に一旦、地元大分に帰った。今までお世話になった人々へお別れの挨拶。数々の友達に大家さん、そして、あのホームレスのおばちゃんだ。

僕は、大量の食料と布団とテントを買い、友人に借りた車のトランクに詰め込んで、おばちゃんに会いに行った。しかし、いつも居た寝床にもダンボールがない。おかしい・・。それから、何日か、おばちゃんを探すも、見当たらないのである。

ええ・・大丈夫かなぁ・・。何かあったのかな・・。

後日、例のスーパーの駐車場で僕は車を止め、待機した。おばちゃんの空き缶集めのルートは、必ずあのスーパーの自動販売機群を通過する。時間帯もこの時間。

ホームレスは、意外と規則正しい事は、実体験として刻まれている。

しばらくして・・・・

狙った通りだった!

おばちゃんが自転車を押して現れたのだ。

よかった・・・生きてた・・。

「おばちゃん!!!僕だよ僕!!覚えてる??」

車から飛び降り、僕は走って行った。

よくよく考えたら、季節は夏。あの、暑い室外機の間に居るわけもないのだ・・。

おばちゃんは、僕を見て「あーーー」と言った。

「良かった!!覚えてくれてたんだ!!おばちゃん僕ね、大分を出ようと思うんだ、だから挨拶に来た!」

僕は、車までおばちゃんを連れて行きトランクを開けて、おばちゃんに渡したいものを見せた。

「これを渡したい!荷物、多いから新しい住処まで持って行ってあげるよ。」

あと、これ、少ないけど何かの足しにして、僕は、おばちゃんに10,000円を差し出した。

おばちゃんは、わーーっとした顔をし、お辞儀をしてお金を受け取った。そして、ちょっと待っててと言う身振りをして、僕を待たせた。目の前のスーパーに入って行ったのだ。

しばらく待つと自動ドアが開き、おばちゃんが出て来た。

おばちゃんは、いつもの好きなロールパンとマーガリンを買って来て、それを高々と嬉しそうに僕に見せ、手に握りしめていたお釣りを全て返してきたのだった。

この時、衝撃と同時に恥ずかしい想いで一杯になった。

お釣りを返して来るわけがないと、どこか高をくくっていた。
僕は、ホームレスを完全に見下していたのである。

言葉を失って、お釣りを受け取った。そして、また涙が止まらなかったのである。

おばちゃんから、本当に素晴らしい気持ちを最後に教えてもらった。

僕の方が、びんぼうだ。

豊かさとは何かをこのお釣りと一緒に、今一度、受け取った。

おばちゃんありがとう・・。

その後、ふるさとに帰るたびにおばちゃんを探すのだが、今だに会えていない。
そして、僕らが過ごしたその銭湯は、今は、潰れしまっていて当然、おばちゃんもそこにはいない。


よし!では、いざ東京へ!!

移住の準備をしていた真っ最中に、また人生を変える人物と出会う。

以前の携帯を復活させると、突然、電話がかかって来たのである。

「おおお!今井くん!元気か?」

10代からお世話になっていた、僕の第2の父であるような社長である。ITやゲームの世界に行ったのは、この人物のおかげなのだ。

「わし、今、岡山におるんじゃ、今、新しい事業をやってて、ちょっと手伝ってくれ?」

東京行きを決定していたのだが、別に日程を決めていたわけでもないし、久しぶりにお会いしたい。
僕は、すぐに東京行きの準備をそのまま、岡山行きに変更した。

そして、想像もつかない展開に進んでいく


第19章へ続く・・・・。

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おばちゃんとさよならしたスーパー

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