【第8章】空缶が支える生活

気絶したような睡眠中に、後頭部を殴られたような衝撃音での目覚め。
ホームレスの日常は、流石に常識はずれである。

隣で、おばちゃんが、大きな袋から空き缶を全てこぼしガラガラと広げていた。

うるさいなぁ・・と思いつつも、その様子を見る。すると、おばちゃんの寝床の脇にあった
パンの耳に目が止まった。

「おばちゃん!それちょっとわけて!」

おばちゃんは、全く惜しむ事なく僕に、その袋を手渡してくれた。

この時、食べたパンの耳の味が、今でも忘れられない。どんな美味しい高級な食事でもかなわない。美味しすぎて、味わいたいけど、早く胃袋に入れたいが、水分が足らずに喉につっかえる。このジレンマと喜びのハーモニーは、なんとも言えなかった。

決してお腹いっぱいとは言えないが、少しだけ空腹が満たされると、お礼におばちゃんの手伝いをした。それは、

空き缶の仕分けである。スチールとアルミに仕分けするのだ。

「おばちゃん、これ袋いっぱいになったらいくらもらえるの?」

僕が尋ねると、その時だけ、おばちゃんは、まともに答えた

「スチール1000円 !アルミ700円!」

僕は、衝撃だった。え?思ったよりお金になる。

しかも、スチールが高いんだ!ジョージアの空き缶の方が高級なのだ。
なるほど!と言う事は、現時点では、僕よりおばちゃんの方が現金を持ってる。

ホームレスは、意外に食える!そう確信した。この人たちは野生に近い非社会の現実の中で生きる知恵は 何倍も蓄えている。

次の日、おばちゃんと空き缶集めに行くが、どうも縄張りがあるようだった。そっちはダメだ!と、すごい顔をするのだ。しかし、僕は、まだまだ、ホームレスに見えないはずだし、縄張りなどお構いなくで手当たり次第自動販売機横にあるゴミ箱を回収して回る。

彼ら的なルールとして反則だから、大量である。空き缶は、その日の16時までに業者に持って行くと現金に変えてくれるので、おばちゃんと一緒に行った。

今井「これお願いします。」

計測器に乗せる、業者は計器を見て渋い声でいう


業者「450円!」


今井「え?なんで??」

業者「お前のはバラ缶だろ、そんなもんだ」

意味がわからない。

ちなみに後で理解したが、バラ缶プレ缶っと言う専門用語があって、バラ缶はそのままの形状を維持した物、プレ缶はプレスして圧縮したもの。

10キロで1000円。

350ml缶を約600〜700個で1000円

※当時の相場

やはり、そう甘くない。

その夜マーガリンを買った。おばちゃんはロールパンを買った。シェアして食べた。
なんだか嬉しくて、妙な、やる気が出てきた。

明日はもっと空き缶を見つけよう!もっと能率の良い場所はないか・・。

そういえばあのパチンコ屋には沢山あったぞ!!明日まずあそこを攻めよう!! そう戦略を立ててると 

ふと我に帰った。

待て待て どんなに頑張ってもホームレスはホームレスじゃないの・・。
そもそも、何を頑張ろとしてるんだよ!

第9章に続く・・・。

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空き缶を拾って歩いた河川敷のコース

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